2007-05-26

相国寺の伊藤若冲展に行きたい(笑)




相国寺の承天閣美術館で開催中の『伊藤若冲展』、気がつけば、会期終了まで残り10日を切ってます。。


伊藤若冲は、メチャクチャ好きな画家というわけではないんですが、今回、最高傑作の『動植綵絵』全30幅が一挙公開だし、『釈迦三尊像』全3幅も出展されるし、こんなことは120年ぶりだということですから、もうね、ハレー彗星なみの邂逅のチャンスですよ。

これまでに、何枚かは実物を見たことがあるのですが、『動植綵絵』とは、なかなか不思議な作品です。
徹底的に写生でありながら、よく見ると、動植物のプロポーションや器官のかたちが不正確であるばかりでなく、想像上の動物である鳳凰までが描かれています。
蓮池を泳ぐ魚の絵は、水面を描いているはずなのに、べつの場所に目を移せば、いつの間にか水中になっているというような、空間のねじれまでが表現されてます。

彼が活躍した江戸時代、写生とは、生を写す、という意味で、風景をスケッチする今の写生と違って、動植物を観察して絵を描く、ということなのですが、いうまでもなく、表面にあらわれるかたちだけを写しても仕方ないわけで、まさに、「生」を写さねばならんわけです。

もちろん、伊藤若冲の『動植綵絵』も、そうした写生理論をふまえて製作されているのですが、そこを超えていくというか、「生」を表現するために、彼にとっては、現実をねじ曲げる必要があったんでしょうね。

その結果、伊藤若冲にしか表現出来ない、生の美しさが、ここにはあります。
確固たるリアリティがありながらも、幻想の世界なのですね。
エロチックな幻視の世界と言っていいかもしれません。
写実と幻想の不思議な交錯が、ここにはあります。

オレは、ファンタジーは冷徹なリアリズムに裏打ちされてこそ成立する、と思っているのですが、伊藤若冲の絵は、まさにそういう絵ですね。
おなじことを、マイミクさんのgoutさんが、いつだったか、べつの言葉で表現されてました。
神は細部に宿る。
伊藤若冲の絵には、細部に神が宿っているはずです。


で、見にいきたいんですけどね、なぜかそのチャンスはことごとく潰え、来月3日の会期終了まで、すでに10日を切りましたです…。今回の展示以降、当分はこの規模ではやらないらしいですから、今回が最初で最後のチャンスかもしれません。
そういうこともあって、どえらい人気で、連日押すな押すなの大盛況らしいのですが、それでも見たい!

行きたいです! 行きたいですぅ~(涙)

そうそう、相国寺で伊藤若冲展をみたあと、伏見の石峰寺に立ち寄って若冲の最晩年の作品である五百羅漢像を見る、というコースが、奨励されてるみたいです。
でも、『動植綵絵』のころの伊藤若冲は、基本的に唐絵。五百羅漢像のころは琳派、大和絵に大きく回帰しており、そのかんの隔たりは相当なもので、一足飛びのように思えて、よくこんなコースを勧めるよな、と思います。
で、案の定ですが、石峰寺の五百羅漢像は野ざらしなので、バカが持ち帰ろうして制止される、という事件が相次いでいるらしいです。。。

なんとなく怒りのパワーが沸いてきて、『動植綵絵』全30幅、画像をアップしてしまいました。。

「芍薬群蝶図」


「老松白鶏図」


「南天雄鶏図」


「雪中錦鶏図」


「牡丹小禽図」


「芦雁図」


「雪中鴛鴦図」


「梅花皓月図」


「梅花群鶴図」


「棕櫚雄鶏図」


「桃花小禽図」


「菊花流水図」


「梅花小禽図」


「秋塘群雀図」


「紫陽花双鶏図」


「老松鸚鵡図」


「芦鵞図」


「蓮池遊魚図」


「老松白鳳図」


「向日葵雄鶏図」


「大鶏雌雄図」


「群鶏図」


「池辺群虫図」


「貝甲図」


「老松孔雀図」


「芙蓉双鶏図」


「薔薇小禽図」


「群魚図(蛸)」


「群魚図(鯛)」


「紅葉小禽図」



あ、この日記のトップの画像は、『動植綵絵』ではなくて、『鳥獣花木図屏風』。
じつは、『動植綵絵』よりもこっちを見たい!とずーっと思い続けているのですが、この作品は、近年、伊藤若冲が評価される以前(さらに言えば、現在でも伊藤若冲筆なのかどうかの真贋論争がありますが…)にアメリカ人コレクターのプライスさんが安価でお買い上げになり、現在、プライス・コレクションの一環に加わっております。見られるチャンスがあるのかどうか…。

2007-05-23

梨木神社と廬山寺に行く

今日は、京都に行く用事があり、少し時間がとれたので、久しぶりに京都神社仏閣巡りを敢行したのでした。

ただし、相方さんは時間がとれなかったので、久しぶりに、オレ単独で。
なんだかんだで、新規開拓って3月以来です。
せっかくいい気候になってきたの、全然行けてないんですよね~。

行ってきたのは、御所のすぐ東にある梨木神社と廬山寺。

まずは、梨木神社から。



御所に寄り添うようにひっそりと建っている神社なんですが、萩と紅葉が生い茂っていて、なかなか趣のある神社ですわ。
最初の鳥居からかなり長く参道が続いていて、なんだかウナギの寝床のような神社というか、京風にいうと、町家風な神社(笑)
エラいこと趣があるし、御所横にあるので古い神社なのかなと思ったら、そうでもなくて、創建は明治18年とのことです。
明治維新の功労者として知られる、三条実万.実美父子を祀る神社でして、三条家の旧邸を…、と、まあ縁起はgoogleで検索すればなんぼでも出てくるのでそれは省略するとして、この神社の見どころは、水!です。




ここの井戸水がね、美味いんですよ~。
柔らかくて甘くてね、いいかんじで冷えてるんですが、角も棘もない、まろやかな水ですわ。
この水は、「染井(そめのい)の名水」と呼ばれていて、京都の三名水のひとつなんですが、ほかの醒ヶ井の水と県井の水は枯れてしまってますから、京都に現存する唯一の名水ということになります。
今日みたいな暑い日に飲むと、美味さ倍増☆ 今日行って、よかったです。

しばらく眺めていると、ペットボトルやらポリタンクやらを持参して、この水を汲んでいく人があとを絶ちません。
無料、なんですよ。
無料で、汲んでかえっていいんです。
井戸の傍には、「水汲みは1回につき5リットルまでに」と書かれた立て看板があるんですが、5リットルって太っ腹ですよね。1リットルのペットボトルが5本だもんね。きっと、料亭なんかも使ってると思うんですが、歩いてきてる人が多いところを見ると、近所の人が普段使いに利用してるんだと思います。
歩いていける場所に、こんな名水がタダで手に入るって、すごく贅沢ですね。





で、この染井の水を堪能して、次は廬山寺に。

廬山寺。正式名称を、慮山天台講寺準門跡といいます。
ということは、天台宗のお寺さんで、門跡だから、皇族の誰かが出家して住職を務めるお寺さんということになるのですが、準って、なんでしょうね? 謎です。

謎ですが、わかっていることは、このお寺さんはもともとが紫式部の邸宅であり、源氏物語のほとんどがここで執筆された、ということです。
源氏物語ファンは、一度は訪れなければならないお寺さんですな。まあ、オレは特に源氏物語ファンというわけではありませんが。。。
それはさておき、ということはですな、ここは世界最古の小説が生まれた場所ということになりますね。


山門をくぐるとすぐに本殿があるのですが、本殿の屋根の角度が、いいかんじです。平安期の寺社建築によく見られる、急勾配のカーブが威厳を醸し出していて、本殿前両サイドに笹がしつらえられているのが、なかなか端正です。
境内は大きすぎず小さすぎずで、オレの好きなサイズなのも、気に入りました。

境内は土ではなく砂利が敷きつめられているんですが、本殿を右にまわると、砂利面に唐突に松が植えられていて、なんだかモダンです。
威厳もあるし、端正だし、雅やかですらあるんですが、このお寺さんのたたずまいは、ひとことでいえば、モダンですね。
本殿の玄関口から中をのぞくと、モダンな雰囲気は一層濃くなります。
余計なものが削がれ、洗練され、デザイン化され、モダンを醸し出しています。




そういう予感は導入部からゾクゾクするくらいにあったのですが、本殿を抜けて庭に出ると、その予感は確信に変わりました。
なんとね、重森三玲を思わせるモダンな庭ですよ。
河に見立てた白砂のなかに点在する、苔でしつらえられた中州というか島。。
曲線が大胆に使われていて、非常にモダンかつ、女性的、かつ、雅やかです。ハッとするような驚きがありますよ、この庭には。
苔の島に植わっているのは、桔梗です。この庭、夏に訪れたら、桔梗の紫がぼんぼりのように咲き誇って、とっても雅な趣きになるんだと思います。そのさまを想像すると、この庭全体が、平鉢に生けた生け花のように思えます。生け花というか、一幅の絵というか…。
夏、そのさまを見に、もっかい来たい庭ですね。
ちなみに、この庭は、「源氏庭」と呼ばれ、源氏物語に出てくる朝顔が、今でいうところの桔梗なので、この庭には桔梗が植えられているのだとか。



さらに、観光コースからは外れているので、うるさいおしゃべりに邪魔されることなく、庭を独り占めしてきましたですよ。小1時間ばかり、横になってうたた寝しながら庭を観賞しておりました。
これがあるから、お寺さん巡りは、やめられませんな☆

さて、本堂に目を転じると、さすがに紫式部が源氏物語を執筆したその場所だけあって、源氏物語絵巻の現物が展示してありましたよ。国宝です。
国宝ですが、物々しく展示してあるのではなく、本堂のなかの部屋に、ガラスケースに入れて飾ってあります。フラッシュ焚かないなら撮影してもよろし、と、太っ腹な許可もいただき、ポチッと撮影してきました。
ただ、どの巻の絵巻だったか、メモした紙をなくしてしまって…。
なんだったかな?(笑)