京都は山科あたりへ仕事で行ったので、これ幸いとばかりに、お寺さんに立ち寄ってきました。
山科から醍醐にかけては大ゴマのお寺さんがそろいまくってる黄金地帯なのですが、ちと遠くて、なかなか行けてません。
なので、ちょっとの隙をついて、今回、ひとつだけ行ってきました~。
行ったのは、随心院門跡。
梅園が有名、ということ以外にはなーんも知らずに行ったんですが、ここは小野小町さんが晩年を過ごしたお寺さんなのでした。
醍醐の山の麓にある山寺なのに、ものすごく広くて、どことなく御所に似ていて、格調の高さを思わせます。門跡というのは、皇室出身者が出家し、構えたお寺さんのことですから、格調が高いのもさもありなんなのですが。
ただし、小野小町さん自体は皇室の人ではなくて、貴族出の宮使い。仁名天皇の寵愛を一身に受けた人ですから、扱いとしては、皇室の人間同様だったのでしょう。
で、小野小町さんから連想するんですが、ここはね、小さな御所といった趣があります。
参道が広々としているところも御所を連想させるし、景色がね、計算されまくってますわ。いち山寺でね、こんなにも広々とした参道を持っているお寺さんって、なかなかないですよ。
10個近い堂宇があるので、そのぶん、やはり山門が10個近くあります。
で、山門によって切り取られた風景がね、ことごとく美しくて、どれもこれも、一幅の絵のようです。
醍醐の山を借景にしたり、構図のなかに収まるように松を植えてあったり…、とにかく、これでもかというくらいに計算され尽くしています。
苔むした庭も立派だし、梅園があり、襖絵は三十六歌仙が描かれ…、お寺さんというよりも、名勝庭園のような趣です。
小町さんに思いを寄せる深草少将から寄せられた手紙が埋められているという、千束の文塚。
小町さんがこの水を使って毎日メイクしたという、化粧の井戸。
深草少々の百夜通いの折、小町さんがカヤの実を糸に綴って数をとり、あとにその実をこの地に撒いたものが育ったといわれる、カシの大木。
多くの人たちの手紙を下張りに使ってつくられたという、文張地蔵尊菩薩。
ここは、婦女子さんが喜びそうなアイテムが満載です(笑)
あまりに艶っぽいお寺さんで、お寺さんには似つかわしくない縁起が満載です。
そういうことを思いながら、山門に切り取られた風景を、しばらく眺めていました。
山門に囲まれた四角を額縁に見立てて、その額縁に切り取られた風景を見せるのだから、これは、計算されまくっているわけです。この景色を見よ、と、あたかも写生された一幅の絵であるかのように、そこに飾られているようですら、あります。
その風景を見ていると、オレは、いつも、アンドリュー・ワイエスを思い出します。
彼の描く風景画は、どれもセンチメンタルが溢れていて、そのことを指して、彼は、
私の絵を見てセンチメンタルだと感じる人がいたとすれば、それは、私が、この美しい風景がいつかなくなってしまうことを知りつつも、なくなってくれるな!と思って、描いているからだ、というようなことを言っています。
そのことをね、いつも思い出すんですよ。
ましてや、随心院の山門に切り取られたものは、絵ではなくて、風景。
変わっていくもの、移ろいゆくものでもあります。
風景は移ろい、作庭者が当初考えたものとは、変わっていきます。そしてもちろん、そのことの虚しさ、自分ですべてをコントロール出来ないことの虚しさを、作庭者は、知っています。
知りつつ、それでも、借景を取り入れてしまうのは、なんなんでしょうね? 業なのかな?
ひとときとしておなじ表情を見せない風景を切り取り、かつ、切り取ることでそこに永遠を見いだそうとする作庭者の、自身ではコントロール出来ない、何者かに委ねたその姿勢の潔さがね、オレは好きだったりもします。潔さ、というよりも、儚さ、なのかな。
一瞬と永遠がね、同居しています。
山門に切り取られた風景を眺めていると、いつも、そういうことを思ってしまいます。
ここ、随心院門跡は、そういうことを感じさせてくれる山門が、たくさんあります。
庫裡の入口です。松の姿勢のよさに惚れ惚れしてましたが、屋根の上の櫓もいいかんじです。
塔頭のひとつ、大乗院の山門。端正です。
本堂の大玄関から山門を見た図。山門に切り取られた風景が絵のようです。
山門に切り取られた得ような風景をアップで。
中庭です。苔が立派なんですが、この夏の暑さで元気をなくしていたのが惜しいです。
本堂と薬医院のあいだにある庭です。手前が本堂。
入母屋式が見事です。
薬医院の山門から見た梅園です。これもまた一幅の絵のようで。つつじがいいです。
本堂です。仏壇正面は、文張地蔵尊像、左が卒塔婆小町像です。
三十六歌仙がすべて描かれた襖絵。
こういうのも絵になりますね。
梅園横の参道です。御所のように、広々としています。
梅園から大玄関を臨みます。背後の山は、醍醐山。
大乗院の山門に切り取られた風景。これまた一幅の絵ですね。
総門へ至る参道。ここも絵になりますね。
こういう参道をくねくね歩いて、寺域を進んでいきます。
薬医院の山門から本堂、その後ろに醍醐山。
2007-08-30
永遠と一瞬は両想い(随心院門跡)
ラベル: 醍醐 投稿者 info@luis.jp
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